教員紹介

教育学部教員コラム vol.77

2014.04.03 こども発達学科 所澤 保孝

「新しい門」「新しい道」 ─ヘフティ先生、テンネー先生との出会い─

桜の開花とともに多くの人が新しい学校の門をくぐり、新しい人生をスタートして行きます。人は皆新しいことを始める時には、期待と不安で一杯になります。
このことはスピーチの上手さと人を惹きつける魅力で有名な、第44代アメリカ合衆国大統領・ノーベル平和賞受賞者バラク・オバマ氏にも当てはまります。
バラク・オバマ氏は小学4年生の時、それまで住んでいたインドネシアからハワイに戻り、ホノルルのマノア小学校で初めてアメリカの教育を受けました。5年生の時にアメリカでも有名な進学校である、ホノルルのプナホウ・スクールの小学校5年生に編入を許可され、中学を経て、そこの高校を卒業しました。

オバマ氏は1979年に、その時出会った担任のメイベル・へフティ先生のことを「自分が感化を受けた先生」として、次のように述べています。
「わたしはヘフティ先生のクラスに編入生として一歩足を踏み入れたときのことを、今も忘れません。それまでわたしは数年間、海外で生活してきました。しかもわたしの名前は誰も発音できないようなものでした。しかし先生はわたしを怖気させませんでした。わたしにクラスの中で貢献できる生徒であるという自信を持たせてくれました。わたしを特別な子として重んじてくれたのです。」

彼はハワイでは当時は珍しいアフリカ系アメリカ人でした。母親は北欧系アメリカ人、父親はケニヤ人留学生でした。母親が離婚し、その後インドネシア人と再婚したため、しばらくインドネシアで生活をしていたのでした。
小学校4年生の時、彼はハワイにいる母方の祖父母のもとにあずけられ、上記の公立小学校を経て、編入生としてプナホウ・スクールという有名な学校の「新しい門」をくぐることになったのです。最初は、彼自身も述べているように「場違いなところに」来てしまったと感じていたようです。
しかし、心細い編入生をクラス担任のヘフティ先生は、心から歓迎してくれたのでした。しかも、彼の生い立ちがクラスの友にとっても特別の意味を持つことを覚らせ、少年のバラク・オバマに自信を持たせ、重んじてくれたのでした。先生は特定の子を贔屓したのではなく、彼が一日も早く適応できるように、また彼もクラスに貢献できるように支援してくれたのです。
ハワイという環境の中でプナホウ・スクールという「新しい門」をくぐり、メイベル・へフティ先生と出会ったことが、ハワイ出身でアフリカ系アメリカ人という背景を持った彼を第44代アメリカ大統領に育てたと言うことができるのではないかと思います。

プナホウ・スクール卒業後20年たって、1999年にプナホウ・ブリテン誌でバラク・オバマ氏(当時は上院議員)は、次のように書いています。
「ハワイの学校生活で、わたしが得たものは、人間を尊敬し合うという風土の中で、多様な文化に触れたことです。これはわたしの世界観をつくり上げるためになくてはならない構成要素になり、またわたしがもっとも大切なものとして懐いている価値観の土台となりました。」

「新しい門」と言えば、私が文章上で出会って影響を受けたもう一人の先生を紹介したいと思います。その方は関東学院の設立者であり学院長であった、チャールズ B. テンネー先生です。関東学院大学六浦校地正門の両脇に立つ1号館と2号館には、先生が英文で書かれた「A NEW GATE AND ROADWAY」という短い文章がガラス壁一面にあたかも模様のようにプリントしてあります。
文中先生は、関東学院の新しい門に碑文が無いことを非常に残念に思っておられます。例えば、アメリカ・ニューヨーク州イサカにあり、アイビー・リーグに属するコーネル大学の正門には、中世から続くイタリアのパドゥ大学の玄関にあるラテン語の碑文、「汝よ入れ。そして日々学び、日々思慮深くなれ。汝よ出よ。そして日々祖国と人類に貢献せよ。」と刻み込まれているそうです。

この短い英文の中でテンネー先生は自らの教育理念を凝縮して、本当の学問とは何か、教育を受ける意味は何か、について私たちに次のように語りかけています。
「自己の中だけで完結してしまう学問というものはむなしいものといえます。本当の学問とは他者のためにあるもの、人々を祝福するためのものなのです。私たちが大学に入学するのは、自分に必要なものを得るためだけではありません。世の中に広く奉仕する準備を整えるためなのです。・・・まさに大学の門から「出る」ということは、大学の門に「入る」ことと同じように重大なことなのです。どれほど優れた学者を養成したとしても、彼らがその才能を身勝手に活用する限り、私たちの誇りとはなりえません。入学時の原点の志である奉仕の精神が欠けているからです。」

私たちが「新しい門」をくぐる時、人は誰しも期待と不安で一杯になります。「新しい門」は「新しい道」に通じ、その道は新しい人達との出会いに満ち満ちています。「新しい門」はあなたの果てしない将来に広く続いています。「新しい門」をくぐって「新しい道」を歩んでいく時に、それは「世の中に広く奉仕する準備を整える」ためのものであることを常に胸に刻んで、雄々しく歩んで行って欲しいと願っています。

 

 

大学構内から見た六浦校地正門
正門両脇1号館2号館のガラス壁面にプリントされた
テンネー先生の英文

 

 

所澤 保孝(人間発達学科)

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