教育学部教員コラム vol.105

2016.10.01 こども発達学科 横浜勇樹

「アジアの児童福祉」

アジアの経済成長は世界から注目されています。つい最近まで、中国が各国のモノづくりの拠点と呼ばれていましたが、その中国で経済成長が鈍って来ている昨今、人口が多い東南アジアに新たなマーケットを求めて企業進出が始まっています。どの国も経済発展の過程でさまざまな問題が生じています。例えば日本もかつてそうであったように、公害問題や消費者保護の問題、そして経済格差の問題などが出始めます。その中でも弱い立場におかれる子どもの支援はどの国でも、最優先に取り組むべき課題でしょう。

 

一方、経済が成熟した国々も、子どもの福祉や社会保障制度の構築については、万全な政策はなく、よく言われるように所得再分配をどのようにするのが望ましいか、議論が尽きないところです。
実際に筆者がこのところ訪問調査している香港は、昔からアジアの金融の拠点であり現在も貿易の中心となっています。人々の暮らしもいわゆる中産階級が多く社会も安定しています。しかし子どもの問題は日本と同様に、不登校児童、いじめの問題、コミュニケーションをとるのが難しい子どもたちへの支援、保護者による育児放棄や虐待、あるいは青少年の薬物使用の問題も出現しています。

 

しかし、国が違えば支援システムも異なるもので、香港ではスクールソーシャルワーカー(以下、SSW)が、小中学校に常駐して、定期的に担任教諭や関係機関とケースカンファレンスをおこない、SSWが子どもと保護者の支援の中心となっています。その位置づけは日本のSSWとは大きく異なります。またソーシャルワーカーは、自分の仕事の関心に応じて、資格があれば比較的容易に職場を変更することも可能です。
その点、日本ではまだまだSSWが学校に常駐する環境にはありませんし、ソーシャルワーカーの位置づけも社会的には発展途上中と言えるでしょう。単純には比較できませんが、日本が参考にする点はいろいろありそうです。私はアジアの国々と児童福祉や社会保障分野でさまざまな交流が今後、さらに必要になると考えています。

 

  

     香港の児童福祉施設      香港のスクールソーシャルワーカー専用の部屋

 

横浜 勇樹(こども発達学科)

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