教育学部教員コラム vol.149

2020.08.17 こども発達学科 藤村 幸秀

「教師と子ども 小さな小さなドラマ」

私は、36年間小学校の教職の世界にいました。
教師は、確かに厳しい環境の中で仕事をしています。朝早くから教室に行き、子どもたちを迎え入れます。次に職員室に戻って来られるのは、子どもを下校させた午後3時過ぎのことが多いのが現状です。その後には授業の準備、成績処理、保護者への連絡など様々な対応もあります。
しかし、他の職業では絶対に経験できない子どもとの何気ないかかわり、ドラマ、喜び、発見、感動、絆があります。
私が校長をしていた時の何気ない子どもとのやり取りです。
休み時間になると、校庭に出て子どもと遊ぶことにしていました。ある日の中休み、2年生がサッカーゴールにボールを投げ入れ、得点を競うハンドボールのような遊びをしていました。
「校長先生、入りますか。」
「いいか。じゃあ、こっちのチームに入るよ。」
私はルールもあまり分からずゲームに参加しました。相手は小学2年生です。私の投げたボールは簡単にゴールネットを揺らしました。
「校長先生、すごい。ボール、速い!」 「さすが!」 「やばい!」
私は、調子に乗って、大人気もなくどんどんボールを奪い、得点を重ねていきました。その時には、私の得点の半分以上は、ルール違反であることには全く気付いていませんでした。
休み時間が終わった後、職員室に2年生の担任の先生から電話がありました。
「校長先生、申し訳ないですが、Aさんが、校長先生のせいで、楽しみにしていた休み時間がめちゃくちゃになったと暴れているので来ていただいていいですか。」
私は、すぐに2年生の教室に向いました。泣きながら暴れているAさんを、空き教室に連れていき、話を聞きました。
「校長先生が、ルール違反をして点を入れたから、俺のチームが負けたんだ。俺の休み時間が台無しだ。謝ってくれ。」
「Aさん、それは悪かった。ルール違反をして点を入れたことは、本当に悪かった。ごめんね。」
Aさんは頷き、私が差し出した手をしっかりと握り、握手をしてくれました。
それからというもの、Aさんは、私を見つけると
「校長先生、おはようございます。また、休み時間に遊ぼうね。」
と満面の笑顔で声を掛けてくれるようになりました。それからは、ルールをも守って遊んだのは言うまでもありません。

何気ない子どもとのかかわり、その中での小さな小さなドラマ、絆。
教師という職業は、何と素晴らしいことか。子どもとのかかわりは、何物にも代えがたいものがあります。子どもの成長にもかかわれます。こんな素敵な職業はありません。
情熱と思いのある、子どもと、とことんかかわることが出来る教師になることを目指してほしいです。私も全力で応援できるように努力していきます。本気で頑張りましょう。

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