教育学部教員コラム vol.45

2011.09.22 こども発達学科 鈴木 力

子どもの福祉問題の今−子ども虐待、そして東日本大震災から

2010年度に児童相談所の子ども虐待相談処理件数は5万5152件と、前年度の4万4211件と大幅に上回りました。しかしこの数字もあくまで児童相談所の処理件数であり、家庭という密室で起きる虐待の氷山の一角にすぎません。保育や教育、福祉を仕事にするひとは、虐待を受けた子どもと出会う可能性が高いでしょう。

わが家では虐待を受けた子ども4名と生活するファミリーホームを行っています。この写真はこの夏わが家で暮らす4歳のMちゃんです。今幼稚園に元気に通っていますが、Mちゃんも被虐待児です。毎晩深夜に長く夜泣きをし、時に激しい癇癪を起すこともあります。そんな時、一人ひとりの子どものありのままを受容することを大切にしています。

虐待を受けた子どもは、大変疲れています。ゆっくり休むことが大切です。まず信頼できる人と出会い、快適な環境の中で休息し、そして心理的ケアを含めた支援が始まります。やってもらえる経験を通して、自分は人にやってもらえるだけの価値ある人間と感じることも大切です。精神医学者J.ハーマンは、著書「心的外傷と回復」で「回復は人と人との人間関係の網の目の中で起きる」と述べています。

これらは、3.11東日本大震災にも共通することもあります。生活の回復がまず優先され、その後心の回復のケアが必要です。先日1300人以上の子どもが親を失い、両親を失った子どもが238人と報道されました。このまま復興が長引けば、「子どもの貧困」「家族危機」といった家族の問題が深刻化し、社会的養護の必要性が高まることでしょう。

子ども虐待の問題や東日本大震災の問題に私たちにできることは何でしょうか。被災者の方々、また虐待を受けた子どもたちに対して、私たち一人ひとりが頑張り続けている方たちの重い荷物を軽くするために何ができるか、想像し、考え、行動し、共に重荷を背負うことでしょう。

 

鈴木 力(人間発達学科)

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