教育学部教員コラム vol.131

2018.12.01 こども発達学科 小原 豊

「塾の算数と学校の算数」

将来、小学校の教員になりたい皆さんにお聞きします。塾で教える算数と学校で教える算数は「同じ」ものでしょうか? 私の考えとしては「否」です。なぜなら、知識や技能としては同様ですが、考え方や態度の面では画すべき一線があるからです。塾はいかなる理念を掲げようと教育をサービスとして提供し、志望校合格といった切実な目的達成を支える営利企業です。そして学校は、学校教育法(昭和22年法律第26号)の第一条で定義された教育施設であり、文部科学省を監督省庁として児童の全人的な資質・能力の育成に務めねばなりません。これは、塾の方が良い、学校の方が良いといった単純な二元論ではありません。本来の社会的な使命が異なるのです。極論すれば、塾ならば受験に頻出傾向の問題を手早く解く技能の習得に終始しても構わないでしょう。学校のように児童の人格形成に責任をもつ必要は特にありません。しかし学校では、算数の問題が解けるという成果を重視しつつも、その過程で算数の内容と形式がもつ素晴らしさを伝え,先人の努力や工夫への感謝と敬意を引き出すことで思慮や節度を培わねばなりません。また、根拠に基づいて正しい結論を導く過程で,自主自律や守約の徳性を培わねばならないのです。教員を目指す皆さんには、「塾で教えるのに免許資格が要らず、学校で教えるのに教員免許状が必要とされる」ことの本質的な理由を、ゆっくりと考えて頂きたいと思います。

 

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