教育学部教員コラム vol.143
2020.01.01 こども発達学科 伊藤 賀永
新年明けましておめでとうございます。
今年が皆様にとって、健康に恵まれた、実りの多い一年になりますように
心からお祈りいたします。
令和二年元旦
教育学部こども発達学科
伊藤賀永
(スイス・チューリッヒの朝の風景)
令和の御代になって初めてのお正月を皆様はどのように過ごしておられるのでしょうか。お正月の元旦には年神様が新しい年の幸福をもたらすためにそれぞれの家庭を訪れると言われています。その時の目印になるのが門松やしめ飾りだそうです。1月を「睦月」と呼ぶのも、家族が揃って睦みあい、神様をお迎えして、たくさんの幸福をもたらしてくださることを家族皆で喜び祝うという意味が込められているようです。
このように日本のお正月は家族のお祝い事ですが、私が長く住んでいたスイスやドイツではいささか趣を異にします。家族のお祝い事はむしろクリスマスの方で、遠くに住んでいる家族や親戚が一堂に会して、イエス・キリストの生誕を祝います。普段はほとんど閉まることのない街のレストランや映画館が、この時だけは一斉に閉まってしまうので、街から人々が消え、とても静かで厳かな雰囲気になります。ちなみにスイスやドイツでは12月24日午後から26日までがクリスマスの祝日です。
他方、お正月は友人とのお祝い事で、それもメインは大晦日の年越しです。31日の夜から親しい友人たちを自宅に招いてパーティーが始まり、午前0時になると、お互いの幸福な一年を願ってハグし合います。そして、町の至る所で花火が上がり、「ポン、ポン」という花火と爆竹の音がこだまします。その後も明け方までパーティーが続くので、元旦の午前中といえば、ほとんどの人が熟睡中で、クリスマスとは違った理由で、とても静かです。そして、2日からは仕事が始まり、普段通りの日常生活が戻って来ます。日本のお正月を知っている人間にとっては、スイスやドイツのお正月は余りに味気なく、いつも肩透かしをされたような気分になりました。
所変われば、品変わるですね。しかし、日本のお正月も時代と共に変化し、最近のお正月は私が子どもの頃のものとは大きく異なってきました。特別な日であることや「ハレの日」であるという感覚がどんどん希薄になってきたように思います。それでも、元旦の朝の張りつめた空気感や心地よい緊張感は格別で、今も変わることがありません。年が改まったことで気持ちが一新され、新しい年に期待を込めて、今年一年も賢明に生きていこうと多くの方が心ひそかに誓われるのではないでしょうか。