教育学部教員コラム vol.144

2020.02.06 こども発達学科 横浜 勇樹

子どもの貧困

新聞やインターネットで毎日のように子どもの貧困という語を聞く機会があります。子どもの貧困の指標はさまざまな要素を加味して検討したものもあります。例えば戸室1)は、都道府県別の子どもの貧困率を明らかにしています。それによると、貧困率は、神奈川県11.2%、東京都10.3%、大阪府21.8%、鹿児島県20.6%、沖縄県37.5%など都道府県によって大きく差があることがわかりました。子どもの貧困を考えるとき、子ども自身は仕事により収入を得ることはできないので、子どもの家族の経済状況が大きく影響します。例えばひとり親家庭ではこの貧困率は高くなり、子どもの生活費や教育費をどのように確保するかが深刻な課題になっています。また、先のデータが示すように、わが国の自治体の人口、経済規模、産業構造や地域性なども、子どもの貧困対策に影響を与える要因となっています。
本学のある神奈川県は、他県に先駆け子どもの貧困対策に取り組んでいる自治体の1つです。ここに注目される調査結果があります。「子どもの貧困対策への新たな取組みの提案~」(平成30年3月 かながわ子どもの貧困対策会議)です。これは県内の子どもに関わる支援者、相談者およそ2,000名を対象に「子どもの貧困に関する意識調査」をおこなったものです。この結果から、私たちが日常生活で子どもの貧困対策のために必要な大切な結果が明らかになっています。例えば下記の結果からは、相談窓口や経済的支援のみならず、学習支援、子ども食堂など居場所づくりの必要性も述べられています。

 

1)戸室健作:山形大学人文学部研究年報 第13号 33-53 2016年3月.

 

また、下記の結果からは、支援者と関係機関とのさらなる連携の必要性が明らかになりました。児童相談所、小学校、中学校との必要性を求める声も大きくあります。子どもたちは生活のほとんどの時間を学校で過ごします。学校は学習する場であるのみならず、部活動、友達との交流など、さまざまな経験をすることで、子どもたちが自分の将来を考える機会になっています。わが国の経済状況や家庭の状況をみると、子どもの貧困は、子どものみの問題ではなく、大人の経済状況など社会全体、地域の問題として考えるべき事柄なのではないでしょうか。

 

  • 一覧に戻る
PAGE TOP
〒236-8501 横浜市金沢区六浦東1-50-1 TEL:045(786)7002
Copyright(c)2013 Kanto Gakuin University All rights reserved.