教育学部教員コラム vol.152

2020.11.25 こども発達学科 三谷 大紀

コロナ禍で保育を考える

 2月28日、感染拡大のスピードを抑制するための措置として、全国の小中高校などに臨時休校が要請されました。そして、4月7日に、「緊急事態宣言」が発出され、小学校等の学校が一斉休校になったのは記憶に新しいと思います。でも、「あれ?幼稚園は?保育園は?認定こども園は?」って思いませんでしたか?

 幼稚園は、学校でありながらそこに入らず、各園の判断と対応になり、保育所や認定こども園は自治体により、登園自粛と休園の判断が分かれ、混乱した実態がありました。こうした状況からは、まだまだ保育の重要性が社会に認知されていないことを思い知らされた気がします。子どもを園に通わせていた保護者にも影響がありました。全国認定こども園協会の調査によれば、休園や登園自粛によって保護者の4人に3人が「子育てや生活で困った」「保護者の半数以上が自身の心身に変化を実感」と保護者自身の心身への影響があったほか、6割の家庭で「子どもに気になる変化があった」ことが報告されています。*1 つまり、休園や登園自粛は、子育て家庭の孤立を生み出し、保護者と子どもにマイナスの影響を与えた可能性があるのです。しかし、それは裏を返せば、日常的に保育が営まれていることが私たちの生活にとって重要な意味をもつことを示唆しています。

 一方、休園・登園自粛期間中、多くの園が保護者や子どもとのコミュニケーションをとっていたことが報告されています。おたよりやメールだけでなく、写真や動画を配信するなど、さまざま方法で、園でのあそびを紹介したり、園庭を開放したり、分散して登園できるようにするなど、保育を必要とする子どもと家庭に対して、継続的に支援を行っていました。(我が家もそうした園の活動に救われ、支えられた家庭の一つです。)また、保育現場からは、自粛期間の少人数保育においてはより手厚い対応が可能だったという声も聞かれました。こうしたことからは、保育という営みが、社会の重要なインフラである一方で、その基準(保育者の配置基準や免染基準等)が今のままでいいのかということ(保育の「構造の質」の問題)を改めて浮き彫りにしています。

 保育が再開後、多くの園では、保育のあり方の見直しを迫られています。プール、運動会等の行事や保育のあり方を多くの園が見直しました。でも、悪いことばかりではないようです。今まで「あたりまえ」に行われていたことを、それが本当に必要だったかを問い直し、新たな保育をつくる機会が生まれてもいます。

 大学の授業も同じです。コロナ対応により、学生も、教員も、負担が増加し、疲弊している状況がないと言えばウソになります。でも、これを機に、さまざまな授業のあり方を見直し、より質の高い授業を展開できるように学生とともにチャレンジしています。コロナ禍において直面したさまざまな問題は、私たちが先送りにしていた問題と言えるかもしれません。目先のコロナ対応だけでなく、そうした問題から目を背けず、保育の質や大学の授業の質向上に繋げなくてはならないと考えています。

*1 NPO法人全国認定こども園協会『新型コロナウィルスに係る就学前の子育て家庭への緊急アンケート調査報告書』2020年8月

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