教育学部教員コラム vol.184

2023.07.25 こども発達学科 藤村 幸秀

「教師と子ども 小さな小さなドラマ」その3

私は、36年間小学校の教職の世界にいました。
教師は、確かに厳しい環境の中で仕事をしています。教員不足の報道もよく耳にします。しかし、他の職業では絶対に経験できない子どもとの何気ないかかわり、ドラマ、喜び、発見、感動、絆があります。

 

私が校長をしていた時の何気ない子どもとのやり取りです。
掃除の時間には出来る限り一緒に掃除をするようにしていました。ある日の掃除の時間、3年生の流し場の掃除の様子を見ていました。流し場のシンクのところを磨いている子、流し場の石鹸を整理している子、流し場の下の床を雑巾でふいている子、とみんな一生懸命掃除をしていました。
「みんな、しっかり掃除しているね。こんなに綺麗になればみんが喜ぶね。」
「校長先生、ここも見てよ。ほら、ぴかぴかでしょ。」
「本当だ、凄いね、頑張ったね。」
「校長先生、僕の雑巾見てよ、こんなに真っ黒で、綺麗にならないんだ。」
「真っ黒ということは、しっかり拭いているということだからね。でも、雑巾貸してごらん。」
私は、流し場にあった亀の子だわしで雑巾をこすりました。すると雑巾がみるみる白くなりました。
「校長先生、凄いね、こんなに白くなった。」
するとみんが私の所に集まってきました。
「本当だ、凄いね、私もやってみよう。」
「俺も、俺も。」
何と、掃除そっちのけでみんなが集まって雑巾を亀の子だわしでこすり出しました。
その時です。担任の先生がいらっしゃいました。
「何やっているの。雑巾を磨かないで、床を磨きなさい。誰がこんなこと始めたんですか。」
私はまずいと思い、謝ろうとしました。ところが、こどもたちは、下を向いて誰一人答えないのです。
「誰が、こんなこと始めたんですか。」
それでも誰一人言いません。みんな黙って下を向いていました。
「とにかく、床をしっかり磨くのよ。」
と言い、担任の先生はその場を立ち去りました。私は、
「みんな、黙っていてくれたんだね。有難う。」
と言うと、頷いて笑い、また掃除を黙々と始めました。
3年生は、自分たちが叱られても、私を守ってくれたのです。校長でありながら何をやっているのだとうと思いながらも、心が温かくなりました。

 

何気ない子どもとのかかわり、教師という職業は、何と素晴らしいことか。子どもとのかかわりは、何物にも代えがたいものがあります。子どもの成長にもかかわれます。こんな素敵な職業はありません。
情熱と思いのある、子どもと、とことんかかわることが出来る教師になることを目指してほしいです。

 

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